「葛城家次男龍になります」


懐かしい声がする。


後宮に来て以来・・・何度願っても聞けなかった声。


それが今・・・・一番会いたくない時に会うなんて・・・。


「葛城家からそなたが来るのは珍しいな。いつも父か兄が来ていたと思うが?」



言外に何故お前がきた?そう言っているように聞こえる。



いつもの那智ならその事にも気付いただろう・・・けれど今日は志高の変化に気付かなかった。



那智の目は今・・・・目の前にいる龍から離れない。



「父と兄に少しは世間を知ってこいと言われましたので」



王を前にしてもひかない龍は・・・確かに那智が惚れてもおかしくない程の強さと輝きを持っていた。



(私には・・・・ないものだな・・・)




志高は龍を見れば見るほど・・・・自分の方が上の立場にいるはずなのに、惨めな思いを味わう。



二人の言葉が切れた時・・・龍が那智の方を向く。



ずっと会いたかった・・・愛する人を近くで見る為に・・・。