霧の向こうのぼんやりした影がしだいに濃くなり、唐突に霧は晴れた。それと同時に、あたりを支配していた静寂が破れ、にぎやかな音が耳に飛び込んできた。
ランダーもソニアも、呆気にとられてまわりを見回した。
二人が立っていたのは、色とりどりの花に飾られた石畳の広場だった。あちらこちらから、テンポの速いにぎやかな音楽が流れ、古風な晴れ着の男女が広場を行きかっていた。
「お祭り……みたいね」
ソニアが狐につままれたような顔つきで言った。
「ああ、そうだな……」
ランダーもぼんやりとあいづちをうって、空を見上げた。太陽は中天にあり、真昼頃だろう。目にしみるような青い空だった。
――一体、あの霧はどこへ消えたんだ?