力強い和音が喧騒を引き裂いて、あたりに響き渡った。
にぎやかな音楽がピタリと止む。
ソニアは七弦琴を弾きながら人々の顔を見た。
――<歌姫>だ
――ベルーの<歌姫>がいるぞ!
不穏な空気が流れ、ソニアの背後でランダーが剣を抜き、地面に切っ先をついた。
「太守さまのお誕生日を祝して」
ソニアが言った。
「最初に<真実の歌>を歌いましょう」
あたりがシンと静まった。
朗々たる声が夜風に乗った。
それは叙事詩のようだった。
ベルーの大地にある池の話だった。
黄金を生み出す池の話。
ベルーの民はいつでも必要な時にその池から黄金を取り出した。そして黄金が余っている時は池に黄金を投げ入れた。
ベルーにとって必要な黄金は身につけられる分だけ。
それ以外は池に渡した。