「乾いたみたいだな――ほら」
ランダーはソニアに服を渡した。
それから背中を向けて、自分も乾いた服を身にまとう。
「ここは死の匂いがしないと思わないか?」
「ええ。でもね、ランダー」
ランダーの耳にきぬ擦れの音が聞こえる。
「ここは生の匂いもしないの」
「子供の頃の事を思い出したよ。寺院の司祭が『強欲』について説教した」
「反省じゃなくて?」
ソニアが鼻先で笑う。
「あいつらが反省するものか――その昔、金鉱を抱えた豊かな城邑があった。住民達は皆、豊かだったが強欲で、神も寺院敬わず、神の怒りに触れて滅んだ」
「大方、黄金に目が眩んだ奴らが攻めて来たんでしょうよ」
「だろうな。神に呪われたその城邑は、一年に一度、祭の日にだけ地上に姿を現す」