どれくらい経ってからだろうか

ランダーは顔に触れる冷たい手で目が覚めた。


シャランと鈴のような音と、ランダーの名を呼ぶ優しい声が聞こえる。


「ランダー、起きて」


「ソニア?」


「大丈夫? ひどくうなされていたわよ」


「ああ」


悪い夢を見た。

はるか北にある故郷の夢だ。


「今、何時(なんどき)だ?」


「そうね――」

ソニアはカーテンをめくって空を見た。

「日没の前かしら」


「よし、そろそろ出かけよう」


「どこへ?」


「広場へ。たぶんお前に歌ってもらう事になる」


ランダーはガバッと起き上がると寝台を降り、裸足のまま暖炉の前まで行った。