「こういう個展のときくらい、ピシッとしなきゃと思ってね。普段はあまり人前に出られるような格好ではなくて……と、悪いね」



こんなところで話している場合ではないな、おじさんはそう言って、あたしと蓮をスタッフルームへ案内した。



「個展の間中、ここにいらっしゃるんですか?」

「いや、そういうわけではないんだが……土日は、もしかしたら来てくれるかな、と思って……ここだよ、入って」



蓮とおじさんが話しながら、スタッフルームへ入る。

部屋の中には一人がけソファーと二人がけソファーがあって、その間に机が置かれていた。

あたしと蓮は二人がけのソファーに腰を下ろし、おじさんは一人がけソファーに座った。



「改めて、ヘンリック・カイヴァントだ。来てくれて本当に嬉しいよ」



カイヴァントさんは口を開くと同時にあたしと蓮それぞれに名刺を手渡した。

パーティーのときにも名刺をもらった気がするけど、どこかに行ってしまった。パーティー会場に落としてきたのかもしれない。