次の土曜日、あたしと蓮は二人で個展会場に向かった。

髪は黒く染め、瞳には黒のカラコンを入れた。ワンピースにカーディガンという出で立ち。蓮も黒のVネックシャツにパンツとシンプルな服装だ。

会場となっていたのは市営の美術館だった。

美術館の中の一角を、個展として使っているらしい。入り口で受付をして、中に入る。



ヘンリック・カイヴァントという画家は水彩画を得意としているらしく、たくさんの水彩画が展示されていた。

入り口から順に見ていく。

ほとんどの絵には共通点があり、それは栗色の髪の女性が描かれていることだった。

様々な表情の女性が描かれていた。笑っている顔、怒っている顔、泣いている顔……いろいろあるが、共通した一人の女性だった。

いろいろな表情がある中で、一つの絵に目を奪われた。会場の中心、一番目立つところに飾られた絵。百合の花畑の中で微笑む、ワンピースに麦わら帽子姿の黒髪の女の人。

風に吹かれる髪が綺麗で、とても素敵な笑みなのに……どこか、物寂しくて切なくなる。



「少し、似てる気がするな……」

「え?」

「お前に、少し似てる」