「で?また講義サボったって?」
その後にすぐ
顔色を変えて蛍子さんは琉太を睨んだ。
反省したようにしゅんとした琉太に
私には犬の耳が見えた。
「ごめん、明日からちゃんと出るよ」
「秋澤さんも。
琉太と同じ講義なんだから、
無理やりでも出させてあげてね」
再び優しい笑顔で私にそう言う蛍子さんに
「はい。」と、
それしか言えなかった。
田中蛍子さん。
琉太の好きな人。
大人っぽくて、っていうか大人なんだけど
真っ黒ストレートの綺麗な髪に
整った面長な顔。
すらっと背も高くて
なんていうか、大人。
大人だけど、大人。
背も小さくて綺麗とは言えない私とは
正反対。
蛍子さんに近づきたくて
自分の細くて癖のある天然の茶髪が
コンプレックスだったりする。
それから
蛍子さんはこの大学の講師でもある。