「りーんこちゃん♪」

大学の講義の前。
頭上からそう聞こえて
私は「はい」と
そちらを向かずに
ノートを渡した。

「ありがとう!」


永嶋琉太。
同じ大学の同じサークル。

「ほんと、講義は出ないくせに
成績だけは良いよね。」

ため息混じりに
隣でノートを写す琉太に言った。


「それはノート写すのを
忘れないからだよー」

琉太はへらへら笑いながら
手を止めることなく言う。

そんな琉太に思わず
見惚れてしまう。

そんな自分を抑えて


「私のノートが分かりやすいからでしょ」


平然と言った。

すると琉太はもう写し終わったのか
私の頭にノートをポンと置いて
「ありがとう」とだけ言って
教室から出て行った。