「は・・?」
「だから、てめぇを攫いに来たっつってんだろ」
コイツ、頭おかしいんじゃないの?
なんであたしなワケ?
人違い?
にしてもありえない。
なぜならあたしは今、ものすごく目立つ化粧をしていて
何より高校生だ。
こんな野獣みたいな狼男が女子高生なんかに興味を持つはずがない。
「なんでアンタみたいな人があたしを攫いに来る必要があるの?」
「あン?てめぇこの俺に向かってどんな口のききかたしてんだコラ」
「あ・・、ごめん・・なさい・・。」
なんかコイツ、タチ悪そう!
絶対性格悪いよ!
「で、なぜあたしなの?アナタ人違いでもした?・・しましたか?」
「アンタやアナタやらうぜー、龍樹でいい」
「龍樹、なんで?」
「・・・・なんでもいいだろうが。つーか高校生があんなトコロ
うろうろしてんじゃねーよ」
「・・・龍樹には関係ない」
「あ?」
「なんにも知らないくせに口挟まないで」
あたしが少し声を張り上げると龍樹は舌打ちをして悔しそうに黙った。
そしてそのままあたしは睡魔にいっきに襲われた。
「・・・眠」
知らない間に朝になっていた。しかもここどこ?!
あたしは昨日あった出来事を朝から思考回路を巡らせ思い出した。
「おう、今頃起きやがったぜ。マジカワイイじゃん?龍樹どこで拾ってきたんだよ。
君可愛いねー、名前、何ていうのー?
なんかコイツ、ウザイ。
つーか誰?なんでこんな変なのに絡まれちゃってるワケ?
「触んな。俺のだ」
部屋の奥から聞こえた低いハスキーボイス。
聞き覚えのある、龍樹だった。
「龍樹。お前もついに手ぇ出しやがってよぉ」
「まだはぇんだよー」
「つーか高校生っぽくね?うわー俺好みー」
さっきからあたしの目の前でほざいてるこの野郎は一体何?
「悪ぃ。紹介遅れた。コイツはBlackの副総長、凌介だ」
「は、初めまして。松川愛羅です・・。」
「おー愛羅ちゃん。俺のこと、リョウって呼んでいいから」
この人・・・。
リョウはすごくポジティブシンキングなんだ・・・。
ネガティブなあたしと正反対。
それにしても龍樹と全然違うこの人柄は本当に友達なんだろうか・・・。
「あ!そうだ、あたし龍樹にまだ聞いてないことが・・」
「そうだ龍樹。今日愛羅ちゃんを一緒に走らせようぜ」
あたしの言葉はリョウによってかき消された。
それにしても走らせようぜって、マラソン退会でもやんのかな?
「あぁ、いいぜ」
あたしはこのとき、龍樹の嫌な笑みを見逃さなかった。