なにもかも
順調に運動会までの準備も月日も進んで行った。
― 運動会前日。
ピンポーン
いきなり家のチャイムがなった。
多分。
奏兄のファンの人たちだ。
運動会が近づくと毎年、
奏兄はたくさんミサンガか何かをもらっている。
「奏兄ー?」
私は
奏史を呼んだ。
でも
出てくる気配がなかった…。
「はぁ、しょうがないなぁ…。」
そう言って私は玄関へ向かった。
ガチャッ
ドアを開けると郁がいた。
「ぁ、蒼空だ。」
寒かったのか少し鼻を赤くした郁が照れ臭そうに笑った。
「どうしたの?流依に用なら呼ぼうか?」
流依(るい)とは4つ下の弟のことだ。
郁は
静かに首を振る。
「郁ー?」
固まってしまった郁に問いかける。
「……。」
黙ったままだった。
けど
カバンから小さな紙袋を出して
蒼空の目の前に差し出した。
「?」
いきなり差し出された小さな紙袋に戸惑う蒼空。
「…あげる。」
まるで照れ隠しのように下を向く郁。
「ぇ、いいの!?」
そう言って
郁から紙袋を受けとると
蒼空は玄関前の階段に座った。
「開けてみて」
と、言いながら郁は蒼空の隣に座った。
蒼空が
紙袋を開けてみると
ミサンガが1つ入っていた。
「わぁ♪可愛い」
ミサンガはピンクと黄色と水色で編まれていた。
「よかった♪」
さっきまで下を向いていた郁が
とびっきりの笑顔を見せてくれた。