「ぁ、郁!」
走ってきた少年は1つ下の後輩。
桜峰 郁 (さくらみね かおる)
子犬みたいで私の癒しだ。
「蒼空ー!」
また
誰かが私を呼んでる。
私は、声がする方を見る。
そこでは
数人の女の子達が手を振っていた。
私は、迷わず手を振り返す。
女の子たちはとても嬉しそうに喜んでいた。
「蒼空モテるね」
女の子達に手を振る郁と拓海が顔を見合わせて言った。
「そうかなぁ?」
なんだか照れ臭そうに蒼空は笑う。
「俺よりモテるなよ…」
優輝がしょぼくれながらポツリと呟く。
「蒼空。優輝が蒼空がモテるから羨ましがってるよ!」
拓海がしょぼくれる優輝を指差しながら言う。
「へへっ!」
蒼空は自慢気に鼻を鳴らす。
「でも、なんで蒼空は女の子にモテるんだろね?」
郁が蒼空に素朴な疑問を問いかける。
「なんでだろね」
その疑問に蒼空はまた疑問で返した。
「ばかだなぁ…お前ら。それは蒼空が男だからじゃねーの?」
優輝が悪巧みしてそうな顔で言う。
「ぉい!ちがうだろー」
蒼空は、笑いながら優輝に蹴りを入れる。
拓海と郁は、その光景を見て
「うんうん」と、頷いていた。
「いってーな!ばーか!」
優輝は、蒼空に蹴りを返して
逃げていく。
「イテッ!待てよ!」
蒼空は、逃げる優輝を追いかけて行った。
郁も蒼空を追いかけに行こうと思ったが
諦めて、拓海と一緒に蒼空達の教室に一足先に帰って行った。