「行ってきまーす♪」
「ふぁぁ、いってきまぁす…。」

私は三番目の兄貴の奏史(そうし)と家を出た。

奏史は中2で同じ学校だ。
ちなみにまだ3人兄弟がいる。


奏兄は家を出るなり出待ちをしていた女の子達に囲まれて歩いて行ってしまった。

我が兄ながらモテるらしい。
他の兄弟もなんだけど…。

「ぁっ♪蒼空だ!」

通学途中の小学生が呼んだ。

「ぁ、郁♪」

私は自転車を降りて郁たちの方へ向かう。

「蒼空いいなぁ…。」

郁は蒼空の制服姿を見ながら言った。

「え?何が?スカートが?」
「違うよ!僕は変態じゃない!」

郁は必死に誤解を解こうとした。

「ハハッ☆ごめんごめん。」

郁は「蒼空のバカぁ」と言って続けた。

「中学校だよ。僕も行きたい。」
「え?こればいいじゃん。近いし」


蒼空達も通っていた郁の小学校は
今、蒼空達が通う中学校の隣にある。
私立って訳ではなくて市立なんだが、なぜか隣同士だった。

だから、今も喋りながら同じ方向に向かって歩いている。


「ダメだよ!」

郁は両手で大きくバツマークを作って蒼空に指摘した。

「わかってるよぉ。でもさ、郁はもう小6だから後1年だよ」
「ぅん…。でも…僕…。」

郁は、寂しげな顔をした。

「大丈夫だよ☆1年なんてあっという間だよ!」

蒼空がそう言うと郁は満面の笑顔で「ウンッ♪」と笑った。


「じゃあ、またね郁」

学校が近くなってきたから
蒼空は郁に別れを告げた。

「ぅん♪またね」

そう言って郁は、小学校への残りの道を友達駆けていった。


郁には、あの頃の私達みたいなことが起きてほしくないな…。
あのままの郁が一番いい。