「しかし家出とは、結構やるじゃない?」

ヨシオが運転している車の中、彼がそんなことを言った。

「だって、あのババアがウザいからいけないんだもん。

10時に帰ってくるなんて、これくらいフツーだって言う話なのに」

「ハハハ、それで?」

グチを言うあたしにヨシオが相づちを打った。

「だから夫は愛人ン家に入り浸りなんだよ、みたいな。

あんな口うるさいババアのところになんか死んでも帰りたくないって話だよ。

ありゃ、大恋愛だなんて絶対ウソだよ」

そう、父親と母親は大学生の時に結婚した。