私はトンボ玉をシンがくれた折り紙と同じ箱に閉まった。小さなお菓子の箱だけど私にとっては宝物入れだ。
『じゃぁ、マイちゃん電気消すわね』
消灯時間10分前に中村さんが様子を見に来た。
夜の病院はとても静かで微かな物音さえ響いて聞こえる。
『今日、遅番なの?』
長く入院していると看護師達のシフトは大体分かってくる。中村さんは私の部屋を担当してるけど夜は違う人が見回りに来る事が多いから。
『うん、今日は夜も居るから。だから何かあったらすぐにナースコールで呼んでね』
そう言って中村さんは静かに病室を出て行った。
───カチッ。
私はベッドの横にある小さな明かりを付けた。
こんな早い時間に眠れる訳がなく私は眠くなるまでいつも雑誌を広げている。
シンはどうしてるかな?
ふっとそんな事が気になった。
あの咳じゃぐっすり眠れないだろうし夜の間ずっと続いてしまうのは可哀想。でも私にどうにかできる力はない。
『はぁ………』
私はパタンと雑誌を閉じた。
だってこのファッション雑誌は何度も読んだし、流行りの服を見たって今の私には関係ない。
それに恋愛特集とか好きな人を振り向かせるコーディネートとか、ページをめくれば恋、恋、恋。
恋愛ってそんなに重要?
これもやっぱり今の私には分からない。
読む雑誌もないし出歩いたら怒られるし、夜は私にとって退屈な時間だった。