私からシンを誘ったのは初めてだ。なんとなく今日は長くシンと話していたい。


『やっぱりその方がマイって感じがする』


パジャマに着替えた私を見てシンが言った。

それって褒め言葉?すっぴんでパジャマの方がいいってどうなのかな。


屋上はとても風通しがよくて気持ちいい。病院は嫌いだけどここは好きって思える唯一の場所。


『本当はね、もう戻ってこないかと思ってた』


シンが遠い目をしながらポツリと呟く。私は風でかき消されそうなその声を必死で拾った。


『………そうだね、そう出来たら良かったんだけど』

戻ってきた理由はたくさんあるけど、きっとその中にシンも入ってる。


『ねぇ、ずっと聞きたかったんだけどシンはいつから私の事を知ってたの?』


はじめて会った時シンは私の名前を教えてないのに呼んだし病気の事だって知っていた。

本当はずっと気になっていたけど、その前に関わりたくないって気持ちの方が強かったから。


『言ってなかったけど俺は生まれた時からこの病院で生活してるんだ。だから定期的に診察に来るマイの事はずっと昔から知ってたよ』


ちょっと待って。生まれた時からずっとって………それじゃシンは14年間もここに居たの?


『そんな顔しないで。俺は拡張型心筋症だから』


拡張型心筋症(かくちょうがたしんきんしょう)


確か難病指定されてる心臓病のひとつ。

それは私の先天性心疾患(せんてんせいしんしっかん)より重い病気だ。


『だから俺は髪の長いマイも短いマイも知ってるよ。ずっとこの病院でマイの事を見てきたからね』