屋上は少し風が冷たかった。

私は羽織ってきた黒いパーカーのフードを頭に被り、シンが居る場所へゆっくりと近付く。


今朝シンに冷たくしてしまった罪悪感が今さら芽生えてきた。

“あんたと話してるとストレスが溜まる”

なんて事を言っておいてシンに会いに行った私はどう考えても矛盾してる。もしかしてシンだって心のどこかで呆れているかもしれない。


私はそんな自分の顔を見られたくなくて、フードを更に深く被った。


徐々にシンの足元が視界に見えてきて、少し目線を上げるとシンも同じ色のパーカーを着ていた。


………なんか嫌だな。まるで私が真似したみたいじゃん。端(はた)から見たらペアルックみたいで恥ずかしいし。


『おそろいだね』

私の心を読んだみたいにシンが言う。


『別に真似した訳じゃないから』


相変わらず可愛くない言い方。

頭では分かっていても、どうしても反発的な言い方になってしまう。


『うん、知ってるよ』


でもシンはこんな私でも優しく笑いかけてくれる。


『いつからここに居たの?』

私はシンの隣に並んだ。私が来る保証なんてないのにシンはまるで私が来る事を確信していたような顔。

こんなのはただの気まぐれなのに。

さっきまでは本当に行くつもりなんてなかったし。


『うーん、少し前からかな』


シンはそう言ったけど明らかに手や体は冷えきっていて嘘がバレバレ。

多分、ずいぶん前からここに居たんだと思う。