まるでお母さんに置いて行かれて駄々をこねる子供だ。こんな事が伝えたかった訳じゃないのに。
『………ねぇ、シン。私ね、ドナーが見つかったの。シンがずっと待ち続けたドナーだよ』
今どんな顔してる?
シンは喜ぶ?それとも悔しい?それを確かめるのが怖くて私はうつ向いたまま。
運命って残酷だよね。なんで私なんだろう。
私よりずっとずっと必要な人が居るのに。
『マイはどうしたいの?マイの事でしょ?』
シンは何故か冷たい。いつも優しいのにこんな時だけ突き放すなんてずるいよ。
『…………だって私だけ助かったって意味ない。
シンが居なきゃ、シンが居てくれなくちゃ……』
あの海で言った事、私は本気だった。
“死ぬのを待つより、ここで選んだ方が楽だと思わない?“
あのまま二人で死ねたら私はきっと幸せだった。
でもシンはそれすら許してくれない。
いつもいつも死ぬよりも生きる事を選んで、
今だって私に生きろって言う。
『シンどこ行くの?私も連れてってよ』
するとシンは笑顔で首を横に振った。その時、
発車の汽笛が鳴り響いてドアが閉まる。
『待って、シン行かないでっ!私はシンにまだ伝えてない。大事な事何も言ってないよ』
そんな私の気持ちを無視して電車はゆっくりと進んでいく。
『嫌だっ待って!シン、シンっ!何か言ってよ。
お願いだから何も言わずに行かないで』
泣きながら追いかける私にシンの口元が微かに動いた。
『マイ、俺はね………………』