病室は当たり前だけど殺風景で、漫画とかゲームとか雑誌とか暇潰しのものは一切ない。

別に持ち込みは出来るし、もっと過ごしやすい部屋にする事は可能だけど私はそんな部屋にしたくない。

だって過ごしやすくしたら、ここでの生活が苦痛じゃなくなる気がして。


私は普段は開けない白いカーテンに手を伸ばし窓から見える景色に目を向けた。


ふっとたまに外での生活が夢だったかのように思える時がある。

もっとやりたい事をやっておけば良かった、なんて後悔してみたりして

まるで私の人生はここで終わると決めつけてるみたい。


“シン君はね、もう3年待ってるの”


聞き流したはずのあの言葉が繰り返し頭から離れない。

気が付くと私は長い間、外を見ていたらしく辺りはすっかり日が落ち始めていた。

夕焼けは割りと好きな方だったけど、今は1日が終わってしまう虚しさだけが残ってしまう。


私は後どのくらいこの生活を続ければいいのだろう。

ぐるぐると色々な事を考えて、私は静かに病室を出た。


向かった先は絶対に行かないと決めていた屋上。


そこに行けば何かが変わる気がして。

そこに行けば、何かを変えてくれる気がして。


長い階段を登り、少し錆び付いたドアをキィィと開けると夕焼けの中に人影が見えた。



『待ってたよ、マイ』


そう笑いかけるシンの顔を見て、どこか安心している自分がいた。