先生に対しての苛立ちが募る中、耳を疑う言葉が飛んできた。

それは突然に、前触れもなく。


『今日の朝方病院に連絡があってね。
マイちゃんのドナーが見つかったよ』


─────ドクン、ドクン、ドクン。

なに?聞き間違い?先生は今なんて言ったの?


激しい動揺に襲われる中、風間先生がもう一度
ゆっくりとした口調で言った。



『マイちゃんに心臓をくれるドナーが見つかったんだ』


足がガクンと崩れ落ちそうになったのは喜びなんかじゃない。目まぐるしく襲いかかる現実に私は声を上げた。


『なに言ってんの?だったらその心臓をシンにあげてよ。当たり前でしょ、そんなの。シンが今死にそうになってるのに私のドナーが見つかった?
冗談はやめてよ』


私は不条理な現実に笑いさえ起こりそうになった。だってシンは何年もドナーを待ち続けて、駄目だって分かった時でさえ諦めなかったんだよ?

それなのになんで私?

おかしすぎて笑っちゃう。


『早く、新しい心臓が見つかったんだからシンにあげてよ。先生なら出来るでしょ?ねぇ、早く』

『マイちゃん』


うなだれるように言う私の肩を先生は掴んだ。
そして、


『先生だってシン君を救いたい。1%でも望みがあるなら移植もしたい。でもこの心臓の適合はシン君に合わなかった。そしてピタリと合ったのがマイちゃん、君だよ』


先生の手が震えているのか私が震えているのか分からない。