私は押し出されるように扉付近に移動した。先生はシンの目をライトで当ててみたりしてるけど心電図の音は変わらない。
────ピッピッピッ。
怖くて、怖くて怖くて私は思わず耳をふさいだ。
シンの病室にはシンと仲が良かった看護師達も集まって、あぁ、これは現実なんだって思い知る。
誰でもいつか命は終わる。
それがいつなのか、どこなのか、誰が決めるのか、それとも最初から決まっているのか分からない
でも不思議だと思わない?
私はシンが産まれた瞬間を知らなくて、どんな声を出して泣いたか想像も出来ないよ。
それなのに私は今、シンの命が終わる時に立ち会って涙が止まらない。
シンに出逢って私はつくづく人との絆は出会った
年数でも時間でもないって知った。
どんなに長い付き合いでも簡単に壊れてしまう絆もあるのに、私はシンとの絆がなくなる事はないって自信があるの。
誰に真似出来ない、これから出逢えない、
そのぐらいシンは特別だって事。
病室ではみんな必死にシンの名前を呼び続けている。私はまだ何の覚悟も出来てなくて気付くとフラフラと302号室を出ていた。
『マイちゃんっ』
後方から私を追いかける声。この声は間違いなく中村さんだ。
『………なに?最後だからそばにいろって言いに来たの?』
『違うの、あのね………』
中村さんが何かを言いかけた時、再び別の人の声が廊下に響いた。
『ここから先は私が言うよ』
そう言って現れたのは風間先生。
そう言えば風間先生はさっきシンの病室に居なかった。今まで何をしてたの?
先生はシンの主治医でしょ?