いつの間にか窓の外が明るくなり、どこからか鳥のさえずりが聞こえてくる。
腰を上げた私が302号室を覗くとシンのお母さんは手を握ったまま眠っていた。
『…………シン』
そう呼び掛けても返事は返ってこない。
机の上には倒れる寸前まで折っていた折り紙が置いてある。シンの温もりなんて残ってるはずがないのに手に取ってみたりして。
シンはどうしてあの時、マイに会えて本当に良かったなんて言ったの?
もしかして自分の運命を知っていた?
本当は私だってシンを抱きしめて会えて良かったって言いたかった。それなのにこのままじゃ何も伝えずに終わってしまうじゃない。
『シン起きてよ、お願いだから目を覚まして』
───そう言った瞬間、ピッピッと心電図が大きく波を打つ。今まで静かだったのに血圧も徐々に下がっていった。
そのただならぬ音にシンのお母さんは目を開ける。
『シンっ?シン!』
どんなに揺らしてもシンはピクリとも反応しない。シンのお母さんは慌てて先生を呼びに病室を出ていった。
私は部屋に響く心電図の音を聞きながらシンの元へと近付く。
『ねぇ、シン嘘でしょ。これで終わりじゃないよね?』
溢れた涙がシンの頬に落ちた。
『嫌だ、嫌だよ、シン、シンっ』
シンの手を握ってみたけれどいつもの温かさはそこにはない。自分の手を通じて体温がなくなっていく様を感じた。
『死んじゃ嫌だっ。私まだシンに何も返せてない!言いたい事も話したい事も沢山あるの。だから死なないでよ、私を一人にしないで!!』
泣きながら叫ぶと302号室にシンのお母さんと先生達が戻ってきた。