それから間もなくの事。
風間先生との診察中、廊下からバタバタと慌ただしい足音が聞こえてきた。
それはだんだん近付いてきて、足音が消えた頃ガラッと診察室のドアが開いた。
『先生、302号室のシン君が……っ…』
───ガタッ。
椅子から飛び上がったのは私。看護師さんのただならぬ顔を見て鼓動が悲鳴を上げている。
『すぐに行く』
先生は慌てて診察室を飛び出して行って、もちろん私もその後を追った。
シンの病室の前には先生や看護師達が沢山居て忙しそうに出入りしている。
『…………シンっ!』
私が目にしたのはベッドに寝かされ呼吸器を付けられているシンの姿。
呼吸は荒く、私の所までその息づかいが聞こえてくる。
なんで、嘘でしょ?
さっきまで元気に話していたのに………
風間先生はすぐに聴診器でシンの心音を確かめた。それはいつもより長くて、一瞬病室が静かになった。
そして次に出た言葉は…………
『すぐにシン君のお母さんに連絡して。
早くっ!!!』
なにそれ、どういう意味?
この前は集中治療室に運んで治療してくれたじゃん。どうしてシンはこのままなの?
シンが苦しそうにしてる。
早く誰か治してあげてよ、ねぇ。
『嫌だ、先生、なんで何もしてくれないの?
シンを助けてよ』
私が先生に詰め寄ると看護師さんがそれを制止した。
『シン君に対する治療は全てやった。
だけどシン君の心臓はもう……………』
─────ドクン、ドクン。
誰かこの私の鼓動をシンに分けてよ。
お願いだから誰かシンを助けて。
どうかまだ止めないで、
どんなに弱くても、どんなに限界でも
まだ生きる事を止めないでよ、シン。