『シンと仲良くなってなかったら今頃どうしてたんだろう』


あのまま拒絶し続けていたら私は今でも一人だったと思う。


『俺はどんなに無視されてもマイに話しかける事を止めなかったよ。だって………』

『だって……?』


シンが途中で止めるから思わず聞き返してしまった。シンは少し考えた後、私の目をジッと見つめた。そして…………



『俺、マイに会えて本当に良かった』


それはきっと言いかけた言葉の続きじゃない。


『なに急に、やめてよそんな事言うの』


まるで別れの準備をしてるみたいで嫌だ。素直に受け取れない私は黙って折り紙を折り始めた。


シンの視線が熱い。

今目が合ったら泣いてしまいそうだ。


『だって今言いたかったんだもん。怒った?マイはすぐ不機嫌になるからなぁ』


わざとからかうような言い方。私は案の定ムスッとしてシンを見た。


『怒ってない。なんで私がこんな事で怒んなきゃいけないの?あり得ない』

『はは、怒ってるじゃん。マイは子供だなぁ』


これがいつもの私達。下らない事で言い合って結局いつの間にか仲直りしてる。

変わらない、変わる事がない関係だよ。


───コンコンッ。


その時、病室の扉が開いてそこから中村さんが顔を出した。


『やっぱりマイちゃんここに居た。もうすぐ診察の時間よ』

わざわざ呼びに来てくれた中村さんの言葉に私は慌てて腰を上げる。


『もうそんな時間?シン、ちょっと行ってくるから』


302号室を出る寸前、背中越しで聞こえたシンの声。


『マイ、いってらっしゃい』


バタンッと閉まった扉からもうシンの顔は見えなかった。