そして診察の時間になり、私は診察室へと向かった。


『シンはもう平気なんだよね?』


私の胸に聴診器を当てる風間先生に問いかけた。
シンの診察は終わっただろうしその結果が気になった。


『うん、今のところはね』


先生はそう言ってカルテに何かを書き込んでいる。………………今のところって、そんな曖昧な答えが欲しい訳じゃないのに。

不満そうな私を見て、先生はクルリとこっちを向いた。


『今日はシン君の事じゃなくて、マイちゃんの話をしようか』


なんとなく嫌な予感。

自分の話は得意じゃない。だって現実逃避も傍観者でいる事も出来ない。


『マイちゃんは貧血気味だよね?それは血のめぐりが悪いからだよ。それに心臓に送り届ける血流も弱くなってる』


私は先生が書き込んだカルテを見た。

走り書きで何て書いてあるか分からないけど、
多分良い事は書いてなさそう。


『最近、倦怠感(けんたいかん)に襲われる事はある?』


『………あるけど』


嫌だな。早く診察を終わらせてシンの病室に行きたいのに。


『移植について今はどう思ってるの?』


難しく考えたくない私が難しく考えなきゃいけない問題。

確かに前向きに考えるって決めたけど、はっきりとした答えが見つかった訳じゃない。

でも…………。


『私は大切な人を悲しませたくない』


これが今の気持ち。