『………シンの事可愛くないんですか?シンがそう自分で言ってました』


こんな事シンは望んでいないかもしれない。

それでもシンに悲しい顔をさせる人を私は許さない。


『私にはあの子を育ててるって感覚がないの。夫も亡くなってあの子のご飯も身の回りの世話も全て病院がやってくれているから』


だから会いに来ないの?
だから放っておいても平気なの?


『…………育てるってそういう事ですか?』


一口も飲んでいないお茶の水滴がテーブルに落ちていく。


私が偉そうに言う権利はない、でもね。

私達は同じ毎日を送ってるように見えるけど全然違うんだ。


毎日の診察も薬も本当はつらくて

慣れていくはずの寂しいとか苦しいとか、
そんな気持ちすらなくならない。

きっと一人じゃそれを乗り越えるのは無理だと思う。


『ご飯とか身の回りとかお母さんの役目ってそれだけじゃないと思います』


それにシンはあまり本音を言わないけど家族になら言えるんじゃないかな。

特にお母さんってそういう存在でしょ?

するとシンのお母さんは考えるように無言になった。それは何かの糸を手繰り寄せるように。


『………私ね、元々子供が出来にくい体で不妊治療の末、ようやく授かった子がシンだったの』


シンの出生の秘密。

それを聞いていいのか分からないけど踏み込んだのは私だ。