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『え、本当っ?』
いつもの診察中、私は思わず椅子から立ち上がってしまった。
『本当だよ。今日からシン君は集中治療室から自分の病室に戻る。酸素マスクも外れたしね』
シンは自発呼吸も出来るようになって心拍数も正常に戻りつつある。
『後はシン君が目を覚ましてくれるだけだね』
風間先生も少しだけ安心したような顔をした。
シンが病室に戻ってくれば私はいつでも会いに行く事が出来る。一方通行だけど話し掛ける事だって。
でも1番したい事はシンの手を握る事。
シンが私にしてくれたみたいに。
『午後に移動予定だからたくさんシン君を励ましてあげてね』
言われなくてもそのつもり。
シンがうるさいって飛び起きるまで話し掛けてやるんだから。
私の沈んでいた気持ちが久しぶりに落ちついた。
早くシンに会いたい、早く顔が見たい。
高鳴る気持ちを押さえながら廊下を歩いていると一人の女性とすれ違った。
見た事がない人だけど誰かのお見舞い?
それとも…………
私は歩いていた足をピタリと止めた。
確信なんてないけど、喉まで出かかってる言葉を言わずにはいられなかった。
『もしかしてシンの…………
宇佐見シンのお母さんですか?』