「向井です。向井浩二です。
よろしくお願いします。
何も知らないもんで。田舎物ですから。」
「いえいえこちらこそ、もう一人呼びましょうね。
お酒は何にしますか。」
「あ~緊張するのでママだけで充分ですよ。
ママさえ、良ければですけど。
お酒は焼酎をロックでお願いします。
ありますかね。
こんな高級な所に来た事ないもんですから。
出来れば芋焼酎でお願いします。」
「ありますよ。
そんなに緊張なさらないで私も緊張しますわ。」
直ぐにどこで聞いていたのか、ボーイが芋焼酎のボトルを三種類持ってきた。
「どれになさいますか?」
ママが聞いた。俺は真ん中の霧波を、指した。
ママは、手早くしかし優雅にグラスに氷と霧波を混ぜて俺の前に置いた。
俺は、それを、一気に飲み干した。
「あらま。お強いのね。」
ママは、グラスを拭いて同じ手順で、もう一杯作った。
俺は、それも一気に飲み干した。
そういうやり取りが五度続いた。