それからの僕は日々をなんとなく過ごし、誰かとつるむ気も起こらず、一人でふらふらしていた。
数ヶ月経ち、すっかり冬めいてきた頃、食堂で昼を食べていると先輩に声をかけられた。
「…ハルくん」
「あ、先輩…はい」
「…カツカレー、美味しそうだね」
「そうですね」
「なんかさ、食堂でごはん食べると妙に美味しいよね。私もここ座っていい?お弁当だけど」
「どうぞ」
「ふふっ、ありがとう。カツカレーか、うん、えーと、カツカレー…福神漬けが合うよね」
「そうですね」
そこで会話は途切れ、気まずい沈黙が訪れた。二人でもくもくと食べ続け、食べ終わる少し前の辺りで、先輩は急にこちらを向いて話しかけてきた。
「あの…大変だよね」
「何がですか」
「だから…その」
「別に、大丈夫です」
先輩は目が泳いでいる。デリカシーのない人だ。僕は苛立ったが、手紙を見たあのとき助けてくれたのはこの人だったことを思い出した。まあ確かにあんなことがあれば、その後が心配になってもおかしくない。僕は少し恥ずかしくなった。
「いいんです。あのときは、すみませんでした。もう大丈夫ですから」
「嘘」
「ホントです」
「じゃあどうしていつも泣いてるの」
「…」
ふとしたときに、勝手に涙が流れることがある。あくびに近いので、大口を開けてさっと拭ってしまうが、そんなに分かりやすかっただろうか。
「ごめんね、あのとき、私もあの手紙を見たよ。私がハルなら、きっと生きていけない。気丈だよね。でも、頑張りすぎないで。必要なときは、休養もとってね」
「…ありがとうございます」
「ねえ、よかったら、今日一緒にごはん食べようよ。私奢るしさ、少し楽しいことも必要だよ。幼馴染みにちょっと吐き出しなさいな」
「…そうですね」
「ふふっ、じゃあ授業終わったらメールちょうだいよ。私待ってるから」
「分かりました。…ありがとうございます」
「いーのいーの!私のことは先輩と思う必要ないんだから。遠慮は禁止だからね。じゃ、またあとで」
そう言って先輩はどこかへ行った。僕は食器を片付けて、授業に戻った。