青森は6人の教師によって取り押さえられた



大谷は気絶して病院に運ばれた



青森は2週間の謹慎となった



この学校は壊れてきてる



…いや、狂っているというか



みんな、みんな狂ってる



「…気を付けて帰れよ」



喜々津は弱々しく言った



それは青森にすねを蹴られたからだろう



みんな黙って教室を出て行った



俺はしばらくボーっと座っていた



「…三谷くん?」



「……おわ!!!???」



南世…



「え?…びっくりさせてごめん…帰んないのかなぁって」



「えっと…じゃあ帰るわ」



「……待って」



「は?」



「は…話があるの…!!」






「早く…言うなら言えよ」



南世はなかなか言い出さない



俺はだんだんいらいらしてきた



「…言わないならいくぜ」



多分初めてだろう



南世にこんなに冷たくしたの



「…行かないで!!」



南世の声が教室に響いた



「なんでだよ…」



「……好きだから」



―――え?



「私っ…三谷くんのことが好きなの……!!」






好きだった



そう、好き「だった」






なんでだ…



俺は南世がずっと好きだったんじゃないのか



なんで…なんでこんなに心が痛いんだよ…



すぐに俺も好きだったって言えばいいんだろ?



なんで…言えないんだ?



「…ごめんね」



「南世…」



なんでお前が謝るんだ?



「私…サイテーだよね」



そんなことない…



「神童様が学校にいなくなってから、三谷くんに告るなんて…私、悪女だよね…!三谷くんが神童様のこと好きって知って告るなんて…ごめんねっ…」



南世は逃げるように教室を出て行った



「南世!!」



俺は追いかけようとしたが途中で足が止まった



気づいたんだ



俺は彼女を愛してないんだ






南世華蓮SIDE



自分から諦めるなんて、私はダメ人間だな…



もう三谷くんには合わせる顔がないよ…



ふと入学式のことを思い出した



…一目惚れだった



ずっとずっと彼の方ばかり見てたっけ



1年は違うクラスでほとんど会えなかったけど



気が付けば彼の教室に来ていた



友達にはすぐに彼が好きだとばれた



ずっと…好きだったのに…






「…南ー世ちゃん」



ビクッとして後ろを振り向いた



「函南さん…」



「なんで泣いてるの?」



もうすでに理由がわかっているのかの様に笑っていた



何がおかしいの…?



「三谷くんにフラれたんでしょ?」



「私から諦めたんです!」



ここから逃げたかった



消え去りたかった



函南さんは私の腕をつかんだ



「憎くないの?」



「え?」



「三谷はもともとアンタが好きだったんだよ」



そんな…







「嘘つかないで」



「アタシは嘘ついてないよ」



三谷くんが私を好きだった…



「三谷は神童が転校したことによって、アンタに興味がなくなっちゃったって感じだね」



そんな、嘘だ



あの子がいなければ私は報われたの?



「それにアタシは三谷にはアンタがお似合いだと思うし、アンタの方が物語の主人公にふさわしいと思うよ」



心がずきずきする



「一緒に復讐しようよ」



本当にそれでいいのかな…



「ねぇ、南世ちゃん」



「わ…私は……」








荒竹真琴SIDE



「遅かったな、何してたんだ?」



三谷が遅いなんて珍しいな



なんか顔が暗い



この顔は確か…



フラれた時の顔だ



「フラれたのか―?女の子に~」



「……死ね」



ぎゃぁ!



ホントにフラれてた!?



「南世ちゃんか?」



「なんでそれを…!?」



俺をなんだと思ってる?



「わかりやすいんだよ二股ヤロー」



三谷の顔が少し明るくなった



「なあ」



「ん?」



「神童様の家知ってる」



!?






「抜け駆けは許さんぞ!!!」



「ち…ちげーよ!」



あたふたする三谷



おもしれぇ…



「ほい。これ住所」



「…なんで知ってんだ?つーか、ストーカーで捕まるぞ」



「どこで知ったかは企業秘密だ」



実は本人に聞いたのだ



意外にサラッと教えてくれた



「今から行くのか?」



「…ついてくんなよ」



いかねーよ



どーせ三谷の事だし告んだろ



「ばっちりフラれろよ」



「…死んでしまえ」



…応援したつもりなのに