三谷淳SIDE



「三谷、昨日女帝来てなかったな」



「…ショックだったんだろ」



あれから2日たった



「…今日もいないなぁ」



まさかこれからずっと来ないなんてこと、ないよな



「あははっ!マジうけるー」



女子が以前と違い明るくなったように見えた



「つーか…ムカつかない?あの顔だけの女に清水くんが殺されたなんて」



「私はあいつそれほど美人と思ってないけど」



「だよねー!男は目が腐ってるつーか」



そうか…



神童様って嫌われ者なんだ



いつもあいつらは神童様にくっついていたくせに



都合よすぎなんだよ…!!



急に声が聞こえた



「……ざけんな」






青森…!



「ぇ…青森く…」



「ざけんな!てめぇら!!女帝を侮辱するなぁ!!」



「きゃぁ!!」



青森が机を蹴とばした



「…てめぇごときの気色悪い顔の生命体がでしゃばんな!!」



それは言い過ぎでは…



「…青森くん…っ……いやぁ!!!」



青森が女子大谷杏(オオタニアン)の髪を掴むとグイッっと引っ張った



「青森やりすぎだ!!やめろ!!」



男子や教師が青森を止めに行った



青森は止まらない



大谷の腹を蹴り飛ばし



何度も踏みつけた



大谷としゃべってた女子どもは悲鳴を上げた



「マジ…ヤバいんじゃねぇの……?」



荒竹も、南世も、



俺も震えていた







青森は6人の教師によって取り押さえられた



大谷は気絶して病院に運ばれた



青森は2週間の謹慎となった



この学校は壊れてきてる



…いや、狂っているというか



みんな、みんな狂ってる



「…気を付けて帰れよ」



喜々津は弱々しく言った



それは青森にすねを蹴られたからだろう



みんな黙って教室を出て行った



俺はしばらくボーっと座っていた



「…三谷くん?」



「……おわ!!!???」



南世…



「え?…びっくりさせてごめん…帰んないのかなぁって」



「えっと…じゃあ帰るわ」



「……待って」



「は?」



「は…話があるの…!!」






「早く…言うなら言えよ」



南世はなかなか言い出さない



俺はだんだんいらいらしてきた



「…言わないならいくぜ」



多分初めてだろう



南世にこんなに冷たくしたの



「…行かないで!!」



南世の声が教室に響いた



「なんでだよ…」



「……好きだから」



―――え?



「私っ…三谷くんのことが好きなの……!!」






好きだった



そう、好き「だった」






なんでだ…



俺は南世がずっと好きだったんじゃないのか



なんで…なんでこんなに心が痛いんだよ…



すぐに俺も好きだったって言えばいいんだろ?



なんで…言えないんだ?



「…ごめんね」



「南世…」



なんでお前が謝るんだ?



「私…サイテーだよね」



そんなことない…



「神童様が学校にいなくなってから、三谷くんに告るなんて…私、悪女だよね…!三谷くんが神童様のこと好きって知って告るなんて…ごめんねっ…」



南世は逃げるように教室を出て行った



「南世!!」



俺は追いかけようとしたが途中で足が止まった



気づいたんだ



俺は彼女を愛してないんだ






南世華蓮SIDE



自分から諦めるなんて、私はダメ人間だな…



もう三谷くんには合わせる顔がないよ…



ふと入学式のことを思い出した



…一目惚れだった



ずっとずっと彼の方ばかり見てたっけ



1年は違うクラスでほとんど会えなかったけど



気が付けば彼の教室に来ていた



友達にはすぐに彼が好きだとばれた



ずっと…好きだったのに…






「…南ー世ちゃん」



ビクッとして後ろを振り向いた



「函南さん…」



「なんで泣いてるの?」



もうすでに理由がわかっているのかの様に笑っていた



何がおかしいの…?



「三谷くんにフラれたんでしょ?」



「私から諦めたんです!」



ここから逃げたかった



消え去りたかった



函南さんは私の腕をつかんだ



「憎くないの?」



「え?」



「三谷はもともとアンタが好きだったんだよ」



そんな…







「嘘つかないで」



「アタシは嘘ついてないよ」



三谷くんが私を好きだった…



「三谷は神童が転校したことによって、アンタに興味がなくなっちゃったって感じだね」



そんな、嘘だ



あの子がいなければ私は報われたの?



「それにアタシは三谷にはアンタがお似合いだと思うし、アンタの方が物語の主人公にふさわしいと思うよ」



心がずきずきする



「一緒に復讐しようよ」



本当にそれでいいのかな…



「ねぇ、南世ちゃん」



「わ…私は……」