その後私は施設に入れられた
しかしすぐに私を養女として神童家が引き取ってくれた
「両親が殺されてかわいそうだ」
主人の神童宏(シンドウヒロ)はこう言っていた
私はもう悲しくなんかない
これからたくさん笑うんだ
そう、私は自分が笑うためにたくさんの人を苦しめた
とても…気持ちが良かった
「…それが私なのよ」
直は私を見つめていた
「なんで、僕に教えてくれたの?」
「誰かに分かって欲しかったの。私はずっと苦しんでいたって。…私を軽蔑した?」
「まさか」
直はふっと笑って私を抱きしめた
「……!!」
「…砂羽を世界一幸せにしてみせる」
そう言って直は私の頬に触れ優しく
……キスしてくれた
「砂羽、真っ赤だよ」
「直の…せいよ」
本当はもう世界一幸せなのかもしれない
直に愛されているのだから
「もうすぐ回り終わるわよ」
「そうだね」
私達は降りる準備をした
顔が…すごく熱い
あぁ…幸せなんだな私
それからたくさん遊園地をまわった私達
「今日は楽しかったわね」
「はい、僕は幸せでした」
「…私もよ」
直は私を家まで送ってくれることになった
手はずっと握ったままで
「また、行きたいわね」
「うん、そうだね」
その時強風が吹いた
鞄のポケットに入れたハンカチが宙に舞う
「あっ」
私は慌ててハンカチを追いかけた
「!!……砂羽ぁ!!あぶない!!」
「え?」
そのときトラックの光が私を包んでいた
「ひっ…きゃああぁぁぁああ!!」
私は突き飛ばされ地面に体を打ち付けた
激痛だったが瞬間に気づいた
私を突き飛ばしたのはトラックではないことに
「な…なお?」
私を突き飛ばしたのは
彼だった
彼は血だらけで横たわっていた
「直ぉ!!」
足を引きずって彼のところまで行った
「……さ………わ…ゲホッ…」
「直!すぐ救急車をよぶか…」
彼の血で濡れた手が私の頬に触れた
「……つき…ば…って……ご…め…」
――突き飛ばしてごめん
「しゃべらないで!じっとしてて…」
涙が次々と溢れ出してきた
「……さ……わ……す…きだ…よ…」
彼は次の瞬間動かなくなった
直が…そんなの嫌!!
「嫌…嫌ぁ!!」
直は返事をしてくれない
「直!!直ぉ!!」
私は泣いた
ただ、泣いていた
『ねぇ、私は誰かを笑顔にするために生まれてきたのかな』
昔の私が問いかけてきた
『私が苦しめばとあいつらもお父さんも笑っていたから』
あぁ…
私は所詮苦しむ役だったんだ…
愛は人を苦しめ
苦しみで人は満たされる
病院には変な空気で満ちていた
『手術中』のランプが点滅している
希望なんてない
直は死んでしまうんだ
ランプが消えて中から医者が出てきた
「すいません…努力はしましたが…」
あぁ…
やっぱり死んじゃうんだ
私は、幸せになれないんだ
「…女帝!」
「青森?」
どうしてここに…
「大丈夫ですか!?」
私は頷いた
「…でも、直が…!」
「…清水がか」
私は泣いていた
人前では泣かないようにしていたのに
「…そうよ……私のせいで死んだのよ、…私がっ…殺したの…」
青森は何も言わずに私を抱きしめた
「……ちょっ…青森……」
「…めなのかよ」
え?
「…俺じゃ、駄目なのかよ」