誰かが苦しみ
誰かが笑う
函南真弓SIDE
この学園にカップルはいない
いたとしても、すぐに縁を引き裂かれてしまう
彼女がいるから…
『真弓、ごめん。僕と別れてほしい』
『…いやよ!!嫌に決まってんじゃない!!アタシは…!!』
その続きは言えなかった
彼が悲しそうな顔をするから
『僕は気づいたんだ。僕が好きなのは、本当に愛してるのは君じゃなかったんだ…!』
心にヒビがはいった
アタシはすごく頑張ってかわいくなった
なのに…!!
頑張っても生まれつきかわいいあいつにかなわなかった
「真弓ー、出かけてくるねー」
「……いってらっしゃい」
今も学校にはいけない
今もあいつは笑っているのだろう
今も…
世の中には2種類の人間がいる
笑う人間と、苦しむ人間
その両方がいるから世界はバランスを保っている
アタシは笑う役をもらえなかった
「なんで…!!なんでアタシが……」
全部、全部あいつがわるいのに
アタシは何も悪くない
『真弓、いいことしたら必ず幸せがくるのよ』
お母さんが昔言ってた
だからアタシは頑張って勉強して高校にも入った
「…いいことなんて…!!…ないよぉ…」
いつか…
絶対に奪ってやる
女帝の椅子を
三谷淳SIDE
その日は雨が降っていた
自転車で登校している奴らが嫌いな天気だ
俺には関係ないが
ただこの雨がやな予感を感じさせていた
「三谷、宿題やった?」
「みせねーよ」
「ふ、残念だな。もうやってあるんだ!!」
くっだらね
「…暗い顔すんなよ」
「…ん」
空が泣いているときはどこかで誰かが泣いているときなんだって
母さんが言ってた
嘘だってわかっているけど
何故か暗い気持ちになった
神童砂羽SIDE
今日は雨か…
気分が乗らないな
「ねえ、手紙出したんでしょ?今更怖気つくなよ!」
「え…でもぉ」
…告白か、くだらない
どうせ自分に自信があるから手紙出したんだろ
こういう話は違うところでしてほしい…
「神童様がいるからフラれるかも…」
また私か
「絶対大丈夫だって!!清水くん優しいから!!」
…え?
「放課後、体育館裏でしょ。がんばってー」
清水って…直??
「う…うん!がんばる!」
私は清水を見た
彼は何もなかったかの様に窓の外を見ていた
嫌だ…
清水を捕られたくない…
でも清水ならふってくれるはず
『清水くん優しいから』
清水は優しい
優しすぎるの
もしかしたら…
「清水は私のよ」
絶対に譲らない
私は清水を見つめて誰にも聞こえないように言った
「この時代には――」
授業なんて頭に入らない
ああ…
貴方はなんて素敵なの
清水はあの女にはもったいなすぎる
彼にふさわしいのは私よ
「神童さん?聞いてますか?」
「…すいません、考え事してました」
「そうですか」
喜々津は授業を続けた
所詮教師
女帝を怒るなんてことはしない
私は、なんたって――
放課後――
「ねぇ!ついに告るって!」
「あや~がんば~」
私は体育館裏に来ていた
清水が歩いてくるのが見えた
とっさに隠れる私
藤彩音(フジアヤネ)も告るために来ていた
「藤さん、話ってなに?」
ドクン―
「私は…!!」
ドクン―
「清水くんのこと――」
「清水!!!」
「女帝…」
「神童様!?」
2人は私を驚いたような目で見た
「その子の告白断って!」
彩音は清水を見つめて泣きそうな顔をした
「清水く…」
「私は……あなたが好きなのよ!」
告白を覗きに来たやつらは何故か奇声を発した
「なんだよ、女帝はSだな」
「まじサイテーじゃん」
「彩音がかわいそう…」
最低でいい
残酷でいい
「僕も…女帝、いや砂羽が好きだ」
ただ、あなたが欲しい