お気に入りって…



やっぱり神童様は清水が…



「女帝は俺のものだ。どんな手をつかってまでも手に入れてみせる」



「…勝手にしろ」



清水と青森



めちゃくちゃ仲悪いな



「三谷くんもうすぐ授業だから急いだ方がいいと思う。青森もだ」



「あ…あぁ。さんきゅ…」



俺は小走りして教室に向かった



「女帝のお気に入り…か」



胸が張り裂けそうに痛かった






「みったにーくん!」



「……」



「みー!たー!にーぃぃぃいいい!!!」



「おわ!!!なんだよ!!荒竹!!!」



「さっきから呼んでたんだけど」



なんか…ぼーとしてたみたいだ



「なんかあったのか?」



昼休み。売店のチョコチップメロンパンを食べ終えたころ



「…なにもねーし」



「んーー…女帝のことか?」



こいつ…心が読めんのか?



「……ちげーよ」



俺は早歩きで教室を出た



俺には南世がいる…



神童様がなんだってんだ



美女はイケメンと結ばれてろよ…






神童砂羽SIDE



清水……



あなたが私を助けてくれるなんて夢みたい……



「女帝、お鞄お持ちします」



「ありがとう、清水」



清水だって私の事嫌いじゃないわよね



「清水…」



「どうかなさいました?」



「……なんでもないわ」



とても言えない



いくら清水だって本当の私を知ったら嫌いになるかもしれないもの…






「じっれてーなー、女帝はよーー」



こんな声が聞こえてくる



「成功するに決まってんのに」



うるさい…!!



好きって言えばいいんでしょ?



でもね…隠し事はいつか絶対にばれてしまうの



隠しきれないの



だから、怖い



真実を知られて冷たい目をされるのが






三谷淳SIDE



「はぁ…」



なんだろう、この気持ち



俺は何がしたいんだ…



「…三谷くん?」



「…南世」



南世が一人で屋上に来るなんて珍しいな



「何してんだ?こんなところで」



「え…?あっ……ぇっと…とくに、なにもないよ」



南世って人と話すの苦手なんだ



今までずっと好きだったのに、俺はそんなことも気づかなかったのか



知らないことだらけだな…



勿論神童様のことも何も知らない



「なぁ、南世」



「なに?」



「えっと、なんていうか…人を好きになるって、女の目線からしてどんな感じ?」






「…え?」



ん?



「あ…」



何聞いてんだ!俺!!



「ごめん!!南世!!今のわす「人を好きになるってよくわからないよね」」



南世?



「…三谷くん誰か好きな人がいるんだよね。わかるよ、私だって…好きになるし。三谷くん悩んでるんだ、そうでしょ?」



「…ああ」



「私もよくわかんないけど、好きなのかなって迷った瞬間から好きってことじゃない?」



南世がすっと笑顔になった



「頑張ってね、三谷くん」



そういうと南世は走って屋上から出て行った






俺はまだ気づかなかった



南世が今とてつもなく苦しんでいることが



「…なんで……っ……あの子なの…!?」



そんな声が聞こえた気がした






誰かが苦しみ



誰かが笑う






函南真弓SIDE


この学園にカップルはいない



いたとしても、すぐに縁を引き裂かれてしまう



彼女がいるから…



『真弓、ごめん。僕と別れてほしい』



『…いやよ!!嫌に決まってんじゃない!!アタシは…!!』



その続きは言えなかった



彼が悲しそうな顔をするから



『僕は気づいたんだ。僕が好きなのは、本当に愛してるのは君じゃなかったんだ…!』



心にヒビがはいった



アタシはすごく頑張ってかわいくなった



なのに…!!



頑張っても生まれつきかわいいあいつにかなわなかった



「真弓ー、出かけてくるねー」



「……いってらっしゃい」



今も学校にはいけない



今もあいつは笑っているのだろう



今も…