憧れと嫉妬
俺の中でぐるぐると渦をまいている
ただあなたを見ているだけで
俺は満たされていたのに
愛されたい
俺があなたに抱いた感情はそんなものではなかったのに…
あなたが俺を狂わせた
呪いをかけたんだ
愛せば愛すほど
苦しくなる
次の日
「みったにー!昨日のこと気にしてないよな…?」
「もーどうでもいいわ、荒竹なんて」
「えぇ!?」
顔には絆創膏、手にも絆創膏、お腹は包帯
「誰のせいだと思う?」
「…き、昨日の不良…?」
俺はにこっと笑った
「うん、荒竹くんだよね」
「(無理やり…)あい…ごめんなさい」
まあ、どうでもいいが
教室で荒竹と話していたら北上一穂(キタガミカズホ)が
「三谷ー、先生が三谷を探してたよー」
あぁ?
キンコンカンコン♪
『あー…生徒の呼び出しー、2年三谷淳!清水直!神童砂羽さん!至急生徒指導室に来なさい!!!!』
1人だけさん付けかよ
「昨日のことじゃね?…三谷様」
「げげ!!」
「あー…君達やっちまったねぇ」
黒いオーラで笑う佐々木冬樹(ササキフユキ)先生
「もう、相手の学校から通報があってね…」
「――待ちなさい」
「「え?」」
俺と佐々木は神童様を見た
だって急に待ちなさいだもん
「…っ…なんですか?」
「清水は置いといて三谷はやられていただけで、注意の受けようがないと思います」
「……!!」
神童様が俺をかばってる!?
「しかし…!!目をつけられるような…」
「目をつけられたのは彼ではありません。私です。三谷は私を助けようとしてくれたし、清水は三谷を助けようとしました。それもいけないのですか?見て見ぬふりをしろと?」
ペラペラ話す神童様に佐々木は何も言い返せない
女帝はやっぱ違うな…
「…っ………!!!今回は見逃す!!!!」
で、解散
俺は初めて神童様に救われた
生徒指導室を出ていく彼女がだんだんと小さくなっていった
顔が赤くなるのを感じた
俺は南世が好きなんじゃねぇのか?
南世といてもドキドキすんのに…
こんなこと荒竹にいっても
「この二股野郎!!」
って言われるのがオチだな
俺はせっせと教室に戻ろうとした
「待て」
ん?
「お前だよ」
「…俺?」
「あぁ」
げ!?青森!?
清水と違って苦手なんだよな…
「な…なに?」
青森は俺の腕をいきなり掴んで言った
「余計なことをするな。女帝を守るのは俺だけで充分なんだよ」
「ぇ…?」
なにこいつ?なんなの?
お前昨日女帝のそばにいなかっただろ?
「…偉そうなこといってんじゃねぇよ」
「あ?」
「守りたかったらずっとそばにいろよ!昨日だってなぁ、神童様は1人だったからあんなことになったんだよ!お前馬鹿だろ?」
「…女帝の名を気安く呼ぶな!!」
「うるさいぞ!青森!三谷くん!」
こ…この声は清水のだ
「てめぇ…」
青森がこう言った
「女帝のお気に入りだからって図にのんじゃねぇよ!」
え???
お気に入りって…
やっぱり神童様は清水が…
「女帝は俺のものだ。どんな手をつかってまでも手に入れてみせる」
「…勝手にしろ」
清水と青森
めちゃくちゃ仲悪いな
「三谷くんもうすぐ授業だから急いだ方がいいと思う。青森もだ」
「あ…あぁ。さんきゅ…」
俺は小走りして教室に向かった
「女帝のお気に入り…か」
胸が張り裂けそうに痛かった
「みったにーくん!」
「……」
「みー!たー!にーぃぃぃいいい!!!」
「おわ!!!なんだよ!!荒竹!!!」
「さっきから呼んでたんだけど」
なんか…ぼーとしてたみたいだ
「なんかあったのか?」
昼休み。売店のチョコチップメロンパンを食べ終えたころ
「…なにもねーし」
「んーー…女帝のことか?」
こいつ…心が読めんのか?
「……ちげーよ」
俺は早歩きで教室を出た
俺には南世がいる…
神童様がなんだってんだ
美女はイケメンと結ばれてろよ…
神童砂羽SIDE
清水……
あなたが私を助けてくれるなんて夢みたい……
「女帝、お鞄お持ちします」
「ありがとう、清水」
清水だって私の事嫌いじゃないわよね
「清水…」
「どうかなさいました?」
「……なんでもないわ」
とても言えない
いくら清水だって本当の私を知ったら嫌いになるかもしれないもの…