聞き覚えのする声に反応するとアタシはつい声をあげた



「南世ちゃん…⁉」



どうして?



「青森!どういうこと⁉」



青森もわからないらしく目を見開いていた



砂羽もわからないらしい



でもここに来たのは南世ちゃんに違いない



「真弓ちゃん!これ以上はやめて!」



南世ちゃんはそう言うと砂羽に駆け寄った



「神童様、大丈夫ですか⁉」



砂羽は一瞬安心したかのように見えたが、すぐに叫んだ



「南世さん、逃げて‼」






「え?」



遅かった



青森の蹴りが南世ちゃんに直撃した



「…‼」



南世ちゃんはその場に倒れこんだ



「南世さん‼」



青森がまた砂羽に触れようとしたら、南世ちゃんが力無く立ち上がった



「神童様に触らないで。神童様は三谷くんの大切な人なの」



南世ちゃんはフラフラしながらもそれだけはハッキリ言った



「ふざけやがって…」



「青森くん…!青森くんは馬鹿だよ!馬鹿で、サイテーだよ!好きな人にひどい事するなんて、好きな人には幸せになって欲しいって思うのが普通なの!」



南世ちゃんが珍しく怒鳴っていた



「…だから私は三谷くんを諦めた」



…は?



それ違うでしょ?



「…黙れ!俺は、俺は砂羽が欲しいだけだ。欲しいだけなんだ!」



…そうよ



欲しいから愛すの、欲望のない愛なんて愛とは言わない



青森が南世ちゃんに黙って殴りかかろうとした



南世ちゃんは目を閉じないでじっと青森をにらめつけた



痛々しい音が倉庫に響く



南世ちゃんは倒れるもすぐに立ち上がった



「…もうやめて!青森も南世さんも!」



神童が1人その場で泣き叫んだ



青森は南世ちゃんを殴り続けた



アタシも黙って見る事しかしない



止めようなんて思わない



神童砂羽SIDE



嫌だ…!私のせいで南世さんが…!



青森に私の声は届かない



函南は黙ってカメラを回してた



止めなきゃ、私が…止めなきゃ



怖い…怖いよ



青森がまた南世さんを殴ろうとした



私はただ目を閉じて顔をそらした



「…ごめんなさい……!」



そう、何度も彼女に言った



「南世!砂羽!大丈夫か⁈」



聞き覚えのある声に反応して目を開けると青森を殴り飛ばす淳がいた






君は一人じゃないよ



君は充分愛されているんだから



青森深夜SIDE



三谷淳…!砂羽を奪った男!



許さない!こいつだけは!殺す!殺してやる!



…!



「砂羽、どいて」



砂羽は首をふった



砂羽の手は南世の手をぎゅっと掴んでた



「…私は、処女じゃないわ」



「「「「え?」」」」



どういう事?



「私は貴方が望んだような女じゃないわ、それに貴方も私が望んだ男じゃない。気に食わないなら、私を殴りなさい!南世さんに、三谷に…直に謝ったあとに!」



え?砂羽は処女じゃない?え?え?



「誰に、汚されたの?」



砂羽は黙りだった



「嘘だ!嘘だ嘘だ嘘だ!砂羽は完璧な女だ!俺以外に汚されるなんて…嫌だ!嫌だぁ!」



三谷淳SIDE



青森が壊れた



俺は砂羽と南世の前に出た



俺は青森に勝てる気はしない、全く



でも俺が二人を守らないといけない



青森は鉄パイプを持って俺に襲ってきた



…いや、ヤバすぎなんだけど⁉



勝てる勝てないじゃない!生きるか死ぬかじゃん!



え、ぇえ⁉



俺は思わず目を硬く閉じた






…ここはどこだ?



俺はあの時確か死んだ気がした



あぁ、天国かぁ



砂羽も南世も無事かな…



ごめん、砂羽



ごめん、南世



サイテーな死に方しちゃって…






「三谷くん!」



「淳!」



俺、死んでいませんでした



お騒がせしてしまってごめんなさい



俺は病院のベッドで目が覚めた



ベッドの周りには、砂羽と南世と荒竹を中心とした高校の友達、俺の家族がいた



「よかった、よかったぁあ!」



涙でぐっしょりした南世が俺に抱きついてきた



「お、ちょっ、まて!」



誰か状況を教えて!