「さぁ!函南!女帝に謝れ!」



「跪くのだ!!」



今行われているのは



『粛正』という名の暴力



「いったぁ…いやぁ!!やめて!!」



函南は泣き叫び助けを求めた



「…三谷くん」



南世も怯えた



「…とめられねぇよ」



俺は顔を背けた



そんな函南にも助けがきた



「青森!清水!なにしてんだ!」



喜々津一(キキツハジメ)先生…






函南は神童様に向かってにたっと笑った



しかし神童様は変わらず微笑んでいる



「先生待ってください」



「神童さん?なんだ?」



先生でさえ『神童』と呼び捨てできない



彼女は続ける



「青森さんと清水さんは私に殴りかかろうとした函南さんを止め私を助けてくれました。信じてください、彼らは悪くありません」



「本当なのか?南世?」



「え……?」



女帝が南世を見て優しく笑った



「……はいっ…青森くんと清水くんは悪くないです…!!」



先生は函南を見てこう言った



「…函南、生徒指導室に来い」



函南は青ざめて神童様を見た



「…悪いのはあなたよ」



小声だったがその声は俺にも聞こえた






だからだ



俺は彼女が好きではない



誰よりも美しいが



何よりも



棘がある



毒がある



誰も彼女に触れられない



触れたとたん



毒が回り



死んでしまうんだ






美しさなんて



呪いでしかないというのに






神童砂羽SIDE



「………でさぁ………そう!そう!」



「……なんの話をしてるの?」



「さ……砂羽様!!おはようございます!」



女の子のお喋りは私が入ると終わってしまう



なんの話だったのかしら



「砂羽様今日もおうくしゅうございます」



「神童様シャンプー変えましたか?いつもと違う香りがします」



ちやほやされるのは嫌いじゃない



だけど普通の友達みたいに話したい






……いつからこうなったんだろう



「おはようございます女帝」



「清水……おはよう」



「おはようございます」



「おはよう青森」



私は女帝となって



ずっとずっと求めてた清水直を手に入れた



だから女帝をやめられない



女帝じゃなくなったら清水も青森もいなくなってしまう



「し……神童様おはようございます…!!」



そう……女帝なんてやめられない






羨ましいか?



妬ましいか?



そんなの関係ない



選ばれたのは私



神童砂羽なのだ



「まじ調子乗ってるよねぇ」



しるか



「誰だよ女帝なんてつけたの」



黙れ



本当は私になりたいくせに



私は知っているから



私は特別だから






「神童様」



「どうした青森」



「昨日の函南は1週間の停学処分となったようです」



函南?



あぁ、あいつか



「あら、気にしてないわ」



「それは失礼しました」



私は教室に入り席に座った



私の席からは



清水が見える



変だけど



私の楽しみは清水の背中をみること



皆に怪しまれないようにいつも本を読んでいるふりをする



「神童様」



「え?」



話しかけてきたのは同じクラスの三谷だった







「あの…消しゴム落ちてましたよ?」



「え?あ…ありがとう」



皆が私に敬語で話し



誰もが私を見て顔を赤くする



「し…失礼します…っ!!」



「待ちなさい」



「…え?」



三谷は驚いた様に私を見る



「あなたの下の名前はなんだったかしら?」



実をいうとクラスの人の名字しか覚えてない



「淳…三谷淳です」



「そう…ありがと♪」



そのあと私は机に座って清水を見ていた