彼女はまるで
黒い薔薇のようだ
「すみません…道を開けてくださる?」
そういう彼女は神童砂羽(シンドウサワ)様
『様』って付けないと周りの雑草共がうるさくてしょうがない
「あぁ…どうぞ」
俺の名は三谷淳(ミタニジュン)
神童様は別に社長令嬢でもなく
家がヤクザってわけでもない
「ありがとう」
そう笑う彼女は本当に美しい
黒く輝く髪をたらし
すれ違うだけで誰もが彼女を振り返る
そう
彼女は美しいだけで頂点に上り詰めたのだ
彼女の甘い香り
すれ違うとき必ずする
なるほど
いい女だ
「おい!三谷!!やったな!!」
俺の親友荒竹真琴(アラタケマコト)
「なにもりあっがってんだ…」
「なにがってお前あの『女帝』と会話したんだぜ!?」
うん…
まあよかったのかな?
「つーか超美人だよなぁ」
「…超美人だった」
「だろ!?」
俺は頷く
「神童…砂羽様か」
名前からしてただもんじゃねぇよな
「いいか?女帝を狙うやつなんて数えきれないほどいる(←そのうちの1人)声かけられるなんてお前は幸せ者だよ」
「まーな」
「うぬぼれんなぁぁぁあああああぁ!!」
俺は神童様と同じクラスだしついてんのかな?
神童様は学園のアイドル☆なんかではない
学園の女帝なんだ
そこらの女とは格が違う
「お前女帝が好きなんだろ?」
「あれを好きにならない男はいねーよ」
でも俺が神童様に抱いているのは恋心とは少し違った
興味がないと言えば嘘になる
でも愛してるっていったら嘘になる
複雑なんだ
俺は教室につくと荒竹と別れた
荒竹とは違うクラスだったから
神童様の席はちょうどクラスの中心だった
たくさんの男が彼女をちら見してたが
彼女は気づかないふりして本を読んでいた
あれが女帝の振る舞いか…
神童様はいつも何を考えてるのだろう
「……!!」
目が合った!?
んなわけないか
「三谷くん?顔赤いよ?」
「は!!!!!」
話かけてきたのは隣の席の南世華蓮(ナゼカレン)
クラスでは大人しくてあまり目立たない
「なんでもねぇよ」
俺は授業の支度をしながら言った
俺が神童様を愛せない理由は
彼女が女帝だからだ
昼休み――
「おい、神童いるか?」
F組の函南真弓(カンナミマユミ)だ
「なんの用ですか?」
彼女は相変わらず妖艶な笑みを浮かべる
「お前のせいであたしフラれたんだから女帝と言われるほどの女を見に来たんだ」
「あら、見るだけならもう用は終わりね……目障りだから消え去りなさい」