俺が知ってるはずの満奈。
俺の知らない満奈。
そこには・・・たくさんいた。
笑った満奈。
照れた満奈。
綺麗な寝顔の満奈。
メイド服を着た満奈。
水着を着た満奈。
赤いベアトップのドレスを着た満奈。
どれもこれも、鮮明に残されているのに。
俺の記憶には、1つも残されていないなんて・・・。
そう思うと、悔しくてたまらなかった。
この頃の満奈は・・・俺の腕の中にいた。
視界が揺れる。
あぁー・・・。
満奈が好きだ。
確実に惹かれてる。
どこが好きかって聞かれても、答えらんないけど・・・。
俺は満奈が好き。
頬が温かいモノで濡れた。
それは、しょっぱくて。
切なくて。
悲しい味がした。
何で俺は、満奈の記憶だけを失ったんだろう?
どうして俺は、夜道で襲われたんだろう?
俺を殺そうとした奴には、どんな目的があったんだ?
“金属バットで殴る”
俺と仁菜ちゃんは、同じ方法で襲われた。
これ以外の・・・共通点は?
・・・もしかしたら。
俺が死んでないって事を、犯人が知ってしまったら。
・・・俺はどうなるんだろう?
“隼斗っ!”
一瞬だけ、脳内に誰かの声が響いた。
懐かしいような、甘い声が―――。