(side隼斗)

“はい、もう大丈夫ですよ”

医者にそう言われ、俺は退院した。

母さんが寮まで送ってくれた。

俺、まず事務所行かなきゃな。

おそらくマスコミに追われるだろうな。

少なくとも2週間は。

そう考えると、思わずため息が零れた。

「何でため息なんかついてんのよ」

母さんが運転席から話しかけて来た。

後ろに乗っている俺は、母さんの背中を見つめる。

「いや・・・マスコミに追われると思うと・・・」
「ふふっ。前はマスコミに追われるような事、平気でやってたくせにね」

多分母さんが言ってるのは、アレ・・・女遊びの事。

それを言われると、少し辛い。

それと同時に・・・気になる事がある。

“あたしも愛してるよ”

満奈からの、そんなメール。

しかも俺も、

“俺は満奈の事愛してるから”

そう言う文を打っていた。

このやり取りから考えた事。

満奈は・・・、





―――俺の彼女だ、って事。





俺が失くしたのは、満奈との事の記憶だ。

だとしたら・・・俺らはどうやって知り合った?

今も、その関係は続いてるのか?

桜井満奈・・・。

お前は何者?

流川隼斗・・・。

俺はこの女を本気で“愛してる”のか?

満奈、今何してる?

会いたくて仕方ない。

あと、言いたい事がある。

満奈の事、忘れちゃったけど・・・。





―――満奈を、また好きになってもいいか?