何も考えられなかった。

どうやって家に帰って来たか覚えてない。

ただ・・・気付いたら家にいた。

“隼斗先輩はもう私のモノなんですから”

さっきの萌香ちゃんの言葉が脳裏に甦る。

・・・そうなる事は、分かってたよ。

いずれ、隼斗はあたし以外の女の子のモノになるって―――。

分かってたよ。

分かってたはずなのに。

・・・現実を突き付けられると、凄く苦しい。

胸がギュッて締めつけられて。

涙が溢れて来て。

呼吸すら難しくなる。

嫌だよ・・・。

やめてよ・・・。

隼斗に触らないで。

隼斗に近づかないで。

・・・あたし、萌香ちゃんに嫉妬してる。

彼女でもないくせに嫉妬してるあたしは最低かな?

ベットに顔を伏せて、泣いた。

お母さんに気付かれないよう、静かに・・・。





・・・どのくらい泣いたんだろう。

ふと顔を上げて、時計を見た。

・・・15時半か。

そろそろ準備しなきゃ。

重い身体をゆっくりと動かし、鏡の前に座った。

「・・・ひっどい顔」

あたし、ホントに生きてるのかな?

死者のように青ざめた顔は、自分でも疑ってしまうほど酷い。

Rainbowの頃とは全く違う表情をしている自分がいた。

今のあたしには、何が残ってるんだろう?

あたしにとっての“生き甲斐”って何だろう?

鏡の向こうの自分に、そう問いかけた。