すると、
「・・・っくしょう・・・」
小さくて、低い声が聞こえた。
「満奈に・・・婚約者がいる事は・・・」
「知ってる」
俺はそう答えた。
そしたら奴はいきなり、
―――バンッ!
テーブルを勢い良く叩いた。
シーンと静まり返るファミレス。
注目を浴びる俺ら。
それでも相葉は、表情を崩さなかった。
しかし、静まり返ったのも束の間。
ファミレス内にいた人達は、すぐ自分達の会話へと戻っていった。
「“今でも愛してる”だと・・・。ふざけんなっ・・・」
ガヤガヤと賑わうファミレス。
そんな中でも、奴の声だけははっきりと聞き取れた。
「じゃあなんでっ!お前は満奈を手放したんだよっ!」
相葉の言葉が、ナイフのように心に突き刺さった。
そりゃ、俺だって・・・。
満奈を手放したくなかった。
ずっとずっと、俺だけのモノでいてくれるって信じてた。
好きだった。
・・・いや、好きだ。
愛してる。
だけど―――。
「これは、アイツが決めた事だから」
“満奈ちゃんは、自分で決めたのよ。貴方に引きとめる権利はないわ”
いつかの母さんの言葉を思い出した。