(side雅也)

“まだ・・・アイツの事が好きなのか?”

彼女にとっては、辛い質問のはずだ。

答えられないと思ってた。

・・・しかし。

“・・・はい”

その返事は確かに、俺をどん底に突き落とした。





満奈をスイートルームに泊らせ、俺は1つ下の階に下りた。

あらかじめ用意していた、もう1つの部屋に入る。

―――バタンッ

ドアを閉めた。

その途端、零れるため息。

「何でだ・・・っ!」

あの時・・・。





―――絶対に彼女を手に入れられると思ったのに。





確信したのに。

アイツ・・・流川隼斗とは別れたのに。

満奈はまだ、アイツを想ってる。

流川隼斗・・・。

いい加減、満奈の心を俺にくれよ。

満奈は俺の“婚約者”なんだからな。

もう・・・お前のモノじゃない。

桜井満奈は、俺のモノ。

満奈も満奈だ。

何でまだ・・・あんな奴を想ってるんだよ?

お前の目の前にいるのは・・・この俺だ。

お前は、俺だけを見てればいいんだよ。





上手く行った現実と、上手くいかない現実。

「もう・・・桜井仁菜はいないのに・・・な」

暗い部屋の中、1人でニヤッと笑ってた。

「満奈・・・。お前は、俺のモノだ・・・」