｢流川くん、もっと笑って！｣
｢はいっ｣
―――カシャッ
―――カシャッ
今は雑誌の撮影中。
カメラマンさんにそう言われた。
“もっと笑え”って言われても・・・。
以前みたいに上手く笑えない。
自然な笑顔が出来ない。
｢どうしたのかしら・・・｣
｢桜井満奈と別れてから、ずっとあんな感じよね・・・｣
周りのスタッフさんの、そんな会話が聞こえた。
そうなのか？
満奈と別れてからの俺・・・おかしいのか？
自分が分かんねぇ。
俺って、どんな風に笑ってたっけ？
表情すら忘れてしまった・・・。
・・・原因は分かってる。
理由は、満奈に会いたくて仕方ないから。
抱き締めて、“好きだ”っていっぱい言ってやりたい。
だけど・・・。
それはきっと、今の満奈にとっては迷惑だろうな・・・。
会社を継ぐ事。
芸能界を引退する事。
俺と別れる事。
柳雅也と婚約する事。
全ては、アイツが決めた事だ・・・。
“満奈ちゃんは、自分で決めたのよ”
母さんの言葉がリピートする。
俺に口出しする権利はない。
俺、ずっと満奈の事考えてんな・・・。
今まで、満奈無しの生活なんて考えられなかった。
でも今はその状態。
今の俺はまるで人形のように。
足を棒にしたまま。
―――ここに、立ち止まっている。
