どのくらい、そうしていたんだろう。

いつの間にか日は暮れて。

―――コンコン

「満奈、入るわよ?」

お母さんが帰って来ていた。

もう19時か・・・。

―――ガチャッ

ドアが開き、お母さんの姿が見えた。

「おかえり」
「ただいま。・・・ご飯は?」
「いらない。食欲がわかないの」
「・・・そう」

悲しそうな顔をするお母さん。

・・・何でお母さんがそんな顔するの?

すると、

「満奈・・・」

不意に、お母さんがあたしを抱き締めた。

背中にまわされた腕。

耳元で聞こえる息使い。

暖かい体温。

隼斗とは違う感触。

お母さんから香る懐かしい匂い。

うっかり泣きそうになってしまう。

「満奈は・・・会社を継ぎたい?アイドルを続けたい?」

耳元で言われた言葉。

その言葉にあたしは一瞬、戸惑った。

ついさっきまでずっとずっと・・・悩んでいた事。

いざ人に聞かれると、余計に答えづらくなってしまう。

「あたしは―――」

あたしは?

その先の言葉が見つからない。

あたしは、どうしたいの?

自分の気持ちが分からないよ・・・。