(side仁菜)

遅くなっちゃった・・・!

今日は6月17日。

私、桜井仁菜の15回目の誕生日なの。

それで、こんな時間まで遊んでたんだ。

修平ん家でね。

お父さん達には、“友達ん家に行ってくる”と伝えていた。

それでも、こんなに遅くなるはずじゃなかったのに。

今の時刻・・・20時半。

絶対怒られるよ・・・!

夜の暗い道を、急いで歩く。

怖い・・・。

・・・こんな時は、修平の事を考えよう。

“大好きだよ、仁菜”

今日の修平は、なんだか甘かった。

普段言ってくれないような言葉も、スラスラ言っちゃって。

おかげで私は、始終照れっ放し。

キスなんか、いっぱいしてもらっちゃった!

“また明日な”

そう言って、ニコッと笑う笑顔にキュンとする。

ホントは、家まで送ってほしかったんだけど・・・。

実は修平にも、許婚がいるんだ。

これからその人に会わなきゃいけないって、今日は送ってもらえなかったんだ。

だから、すっごく寂しい。

はぁ~・・・。

家、まだまだだぁ。

こんなに長かったっけ?

ぼんやりと、そんな事を考えていた。



その時だった。

―――――ガツンッ!

「ぐっ!」

頭を、何かで叩かれたような感じがした。

思わず地面に倒れこんでしまう。



そしてそのまま、私は意識を手放した―――――。



「これで・・・アイツを手に入れられる」

誰かがそう囁いていたのにも知らないで。