10時50分。
「お姉ちゃん!」
あたしの座っていた席の向かいに、仁菜が座った。
「待った?」
「ううん、全然。あたしも今来たところだから」
仁菜の格好は、花柄のワンピだった。
ロングの髪の毛は、くるくると巻かれていた。
・・・我が妹よ、可愛いじゃねぇか。
顔だって、かなりイケてるし。
あたしにも、その可愛さ分けてよ。
こんなブスのあたしにさ。
神様は不公平だよ。
姉妹なのになんでこんなに似てないんだろうね?
はぁーっ、と心でため息をついた。
それぞれ飲み物を注文する。
「今日はあたしが奢ってあげる」
「ホント!?さすがお姉ちゃん☆」
キャピキャピと喜ぶ仁菜。
そんな妹を、変装用の眼鏡越しに見つめていた。
「そういや、相談って?」
「あっ、そう。あのね・・・」
あたしが話題を持ち出すと、仁菜は真剣な表情になった。
「どうしても、お姉ちゃんにしか言えなくて・・・」
そっ、そんなに重大なの?
ちょっとびっくり。
「実は・・・」
この後に聞く言葉に、あたしはただただ驚く事しか出来なかった。
「彼氏、いるんだ・・・」
理解できなかった。
思考回路が完全にストップ。
仁菜に?
・・・彼氏ですと!?
「待って待って待って待って!」
確か、仁菜って・・・。
―――――許婚、いなかったっけ?