「タダじゃ済まねぇよ?」
「へぇ~。アイドルが暴力振るっていいんだぁ」
隼斗は握っていた拳を、思わず緩めた。
「それに、こんな性格だったなんて知らなかったな」
ははははは、と乾いた笑いが耳に焼き付く。
「話題になるだろうな。そんで、お前のせいでSuperStarの人気が落ちるんだ。可哀想にな」
ムカつくっ・・・!
あたしは涙を拭いて、2人の横に立った。
「満奈?」
「隼斗、ちょっと宮瀬くん借りるね」
「はぁっ!?」
「いいからいいから」
隼斗にお願いして、宮瀬くんの正面に立った。
「貴方・・・志望は何?」
「歌手と俳優だけど?」
ふんっ・・・。
あんたみたいな奴が、歌手と俳優になれるかっ!
「どんな風な歌手になりたいの?」
「国民的アイドルのRainbowと同じ立ち位置にいて、みんなに愛される歌手」
アホくさ。
「みんなに愛されたいんだったら、こんな事しない方がいいと思うんだけど?」
あたしがそう言ったら、宮瀬くんは悔しそうな顔を見せた。
ふんっ・・・。
「それにSuperStarの100倍努力しない限り、国民的アイドルなんて夢の夢だわ」
あたしにセクハラ働いてる暇があったら、踊り1つ覚えろや。
既にあたしの怒りも頂点に達していた。
「・・・っ・・・、覚えてろっ!」
すると、宮瀬くんは悔しそうに図書室を去っていった。
その瞬間、急に脚がガクガクと震えだした。
涙も再び流れる。
「・・・満奈」
そんなあたしを、隼斗は黙って抱き締めてくれた。
「俺行くね。邪魔しちゃ悪いし」
「あぁ。太陽!」
「ん?なぁに?」
「ありがとな」
「いえいえ~」
そして太陽くんも、図書室から出ていった。