何が起きたのか分からなかった。

ただ、今の状況は。

「隼斗、大丈夫?」

満奈が俺の元にいて。

その数メートル先に、柚香が倒れている。

近くには姉貴がいて。

「すごーい・・・」

と、驚いたような声をあげていた。

満奈は俺の手をギュッと握りしめている。

「なっ、何があったんだ?」

今の状況を掴めずにいる俺。

「隼斗見てなかったの!?もったいなーい」
「へっ!?」
「満奈が柚香ちゃんに回し蹴りを決めたのよ!」

姉貴が興奮しながら言う。

俺の目の前にいる満奈は、少し照れくさそうにしていた。

・・・嘘だろ?

この満奈が?

・・・回し蹴りだと!?

「あはは。小さい頃に習ったから・・・」
「すっごーい!ねぇ、今度私にも教えて?」
「うん、いいよー」

満奈がそんな事出来るとは。

俺は唖然とした。

「・・・さてと」

どこかから救急セットを持ってきて、姉貴が俺の手の手当てをする。

満奈は、柚香の元に行った。

「貴方、自分で何したか分かってんの?」

その手にはカッターが握られている。

「殺人未遂よ」

満奈は柚香に、重く冷たく言い放った。

「・・・私に隼斗を渡して」
「嫌よ」

どうやら柚香は、まだ諦めてないらしい。

回し蹴りされても、目は覚めてないか。

「隼斗を物みたいに扱わないで」

冷たい瞳。

満奈、マジでキレてる。

「嘘さえつかなければ、“殺す”なんて言わなければ。こんな事にはならなかったのにね」

その時だった。

―――――ウゥー

遠くで、パトカーの音が聞こえた。

「真実はいつもひとつ」

そして満奈は、低い声でこう言った。



「終わりよ、椎名柚香」