「やめろ!」

俺は、柚香のカッターを持った手を掴んだ。

「離してっ!」

しかし、柚香の物凄い力によって振り解かれてしまう。

その時だった。

―――――グサッ

「・・・っ!」

鋭い痛みに、思わず顔を顰めた。

そして、視界に映るのは・・・赤いモノ。

「邪魔しないでね?これも私達のためなんだから」

俺の右手に、カッターが刺さった。

痛ぇ・・・。

そこを抑えても、どんどんどんどん血が出てくる。

「さぁて、桜井満奈はどこかしら」

階段を上がる柚香。

やめろっ・・・!

手の痛みを頑張って堪え、柚香を追いかけた。

奴は既に階段を上がりきっていた。

左に行けば、満奈がいる・・・!

「まずこっちから~」

と、奴は左に曲がった。

「やめろっ!」

俺は柚香に追いつき、もう1度手を掴んだ。

「こっちにいるんでしょ!?通して!」

ヒステリックに叫んだ柚香。

カッターを奪おうとした、その時だった。

―――――ガチャッ!

いきなり、姉貴の部屋のドアが開いた。

中から出て来た人に・・・奴は目を輝かせた。

「いたぁ・・・」
「満奈!何で出て来たんだよっ!」

そう・・・。

出て来たのは紛れもなく、満奈だった・・・。

「隼斗っ!」
「満奈危ない!」

部屋の中から、姉貴も叫んでる。

「殺してやるっ!」

俺の手を振りほどいて、刃先を満奈に向けた。

そして―――――。

柚香は、満奈に向かって走り始めた。

「満奈ーっ!」

俺は、止める事すらできなかった。